甘酸っぱくほろ苦い、思い出詰まった小さな空間
~勝山高校前の電話ボックス~

甘酸っぱくほろ苦い、思い出詰まった小さな空間~勝山高校前の電話ボックス~

昔なつかしい思い出は、今の自分の原動力。
今回は勝山に住む40代女性のルーツをたずねます。

それはずっとそこにある。
勝山高校へ続く、坂道の入口に佇む電話ボックス。
外のざわめきと切り離された小さな世界で3分10円の会話。
3分・・・・それはカップ麺が出来上がるまで。
それはウルトラマンが地上で戦える時間。
10円がガチャンと落ちる音を聞くたび、残りの10円玉とにらめっこする。
電話をかけるのは大抵、学校帰りに迎えに来てもらう時だった。
大学受験の合否を聞きたくて、電話ボックスに駆け込んだ日もある。
サクラチルを聞いても信じられず、「帰る間に合格になってないかな?」なんて考えながら歩いていたっけ。
靴が濡れてしもやけになっても長靴をはきたくなかったあの頃。
遅刻ギリギリで髪をふり乱して自転車をこいだ朝も、部活をさぼった放課後もいつもそこにあった電話ボックス。

久しぶりに前を通ったら、好きな人に電話をかけて何も話せなかったことを思い出し、
急に恥ずかしくなって慌てて通り過ぎた。
待ち合わせに来ない友達に電話をかけたらすれ違い。
狭い空間で電話もかけずに寒さをしのいだことは数知れず。
県外にいる兄から「金、金・・・」という言葉だけで途切れたこともあった。
みんな、懐かしい“電話ボックスあるある”だ。

あの小さな空間が、これまでいくつの会話をつなげたのだろう。そしてこれからも。
今ではすっかり携帯電話に押されてしまったけれど、便利さと背中合わせに、
返信がないことへの不安や窮屈さを感じることもある。
電話ボックスはドーンと構えて、「なんだかあわただしい世の中になったな」なんて思っているのかもしれない。

勝山高校前の電話ボックス


詳しい時期は不明だが、今から何十年も前に設置されたという
勝山高校前の電話ボックス。
携帯電話やスマートフォンが普及する前のポケベル全盛期には、
多くの女子高生が電話ボックスにかけこんでいたらしい。
今の若い人はテレフォンカードとか知っているのだろうか。

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